Top Ka1 Ka2短 Ka2中 痕短 痕中 痕長 ONE短 ONE中 家計 月姫 Ka3短 Ka3中 Ka3超短 Ka4小 Ka4本 オリ肉 Ka5短 CLA1短 ONE2 Ka5中 CLA1中 オリ2 オリ3 Ka6小 Ka6本 AIR オリ4掌 オリ4短

○2% さん

01 きれいなほし (採点:7)
良かったところ:儚い空気。モールス信号が効いていました。老女(?)を「君」と呼ぶギャップも。
悪かったところ:意図的な演出だと思いますが、語られる情報が乏しくて……雰囲気は楽しめたけれど、ストーリーとしては楽しめませんでした。

02 息吹 (採点:8)
良かったところ:「桜」一人称という時点でインパクト勝ち。「梅」との会話がちょっと和み系。
悪かったところ:「私」の思考がすごく人間っぽくて……「桜」ならでは、という超越した哲学を期待していたので、少し残念。

06 left wrist watch (採点:7)
良かったところ:海のシーンが何やら深遠で爽快でした。暗喩っぽい描写が続いているわりに、押し付けがましくなくて。
悪かったところ:最後の一文が決まっていない気がしました。ラストで唐突に「時計」の意味合いを変えられてしまったような印象。


07 愛・おぼえていますから (採点:8)
良かったところ:ストレートなおなはしで、素直に良かった。あと、恩師の芝居がかった魅力に+1点。


09 僕僕先生 (採点:8)
良かったところ:中華好きなので、こういう作品が読めて嬉しい。ありがとうございます。これで漢文書き下し調……というか中島敦ばりの文体だったらなー、などと最初は夢想してしまったのですが、このストーリーならこの文体で正解ですね。
悪かったところ:狙っているのだと思いますが、僕僕先生が少女少女しすぎる印象。もっとミステリアスな演出を期待していました。あと、終盤の「試練」の描写があっさりしていて試練っぽくないかも。ここは山場じゃないのかな? と少し意外でした。

11 江南小話 (採点:8)
良かったところ:舞台と物語の選択が渋すぎです! 雰囲気も出ているし、読めて良かったと思える作品でした。
悪かったところ:内容的には「歴史は繰り返す」というだけで、この手の作品に不可欠な含蓄成分が足りないかもしれません。


12 世界が終わる時、始まる時 (採点:5)
良かったところ:未来的な設定なのに、妙にノスタルジックな空気の漂う作品でした。20世紀的というか、思春期的な未来観なのかな……


13 変わりゆく世界の少年 (採点:5)
良かったところ:カス先生がラブリー!

14 ユメのおわりに (採点:8)
良かったところ:お約束ではあるけれど、やっぱり好きです、こういうおはなしは。ラストの3行が爽やかで、読後感が良かった。
悪かったところ:前橋と練馬だったら日帰りできる距離だしなぁ。読む限り、前橋が不可欠な設定とも思えないし……


15 マリアニスモ・ファンタスティコ (採点:4)
良かったところ:高密度の文字群に圧倒されましたが、実際に読んでみるとそれなりに読みやすい文章でした。こういう……なんというか、作品の暗く淡い色合いを作り出したいならこのような性質の文章を連ねるしかないと思うし、実際、その点ではかなり成功していると感じます。それから、「下をねじ込む」は誤字ですか、誤字ではありませんか。
悪かったところ:冒頭の一文の途中「ブーゲンビリアの赤色」まで読んだ段階で赤色、口腔、性器、血液、死体っていう展開かなー、と予感してしまって(あと、虫も出るだろうなー、と)……で、この分かりやすさは雰囲気作りが物凄く上手いからなのか、それとも題材がありきたりすぎるからなのかと考えて、恐らく後者だろう、と。題材や比喩、言葉の遣い方など、純文系の小説サイトやどこぞの学校の文芸部誌で散々読んだことのある系統の作品なので、どうしても評価が厳しくなってしまいます。ごめんなさい。あと、数々の(魅力的かもしれない)カタカナ語の意味をほとんど汲み取らずにこうして感想を書いてます。重ねてごめんなさい。

16 Masquerade〜機兵舞踏会〜 (採点:7)
良かったところ:邪気のないラノベを読んでいるみたいで、頭を空っぽにして楽しめました。
悪かったところ:悪かったというほどでもないけれど、昌孝の山の知識が生かされるような展開だったらもっと嬉しかったかも。

17 ○ブタ。をプロデュース (採点:5)
良かったところ:海vs川で議論をするというネタのくだらなさが良い具合に青春な感じ。暴走ぶりについても、馬鹿馬鹿しさの中に一抹の爽やかさが光っていました。
悪かったところ:タイトルや内容には、あまりパロディを入れない方が良かったんじゃないかなー……あと、語り手のキャラクターに魅力がないのが苦しい。無関心を装った面白くない奴ほどつまらない人物はいません。

19 青い春 (採点:7)
良かったところ:もう、この初々しさが懐かしい、の一言。間の悪さとか、すごく良い。


20 A Darkness more than night (採点:6)
良かったところ:作中にわざとらしく挿入される数値は演出過剰気味ですが、こういう雰囲気は割と好きです。
悪かったところ:悪かったところ、というか単純に疑問なのですが……
・船内に重力を作らなかったのはなぜ?
・思考機械が「船内でヒトを再び繁殖させる」という選択をしなかったのはなぜ?
・マリィは全て少女(女性)? だとしたら、なぜ?


22 瑠璃 (採点:8)
良かったところ:エレベーターのくだりとか、そのままでも素敵なおはなしだと思いましたが、せっかくなので本多孝好の「瑠璃」を読んでみました。で、両方読んでみた感想としては、こちらの「瑠璃」の二人の方が本多瑠璃の彼らよりも真っ直ぐだなー、と。どちらの人物に好感が持てるかと尋ねられれば、私はこちらだと答えます(物語として切実なのはもちろん本多の方ですが)。作中に散りばめられた元ネタからの引用には思わずニヤリとしてしまうのだけれど、「MISSING」を未読でもきちんとストーリーが成立していたので二度美味しい作品でした。
悪かったところ:形式的にはメタな構造になっていますが、本質的にこの作品は「もし『瑠璃』の主人公たちがもっと本音を言い合っていたらどうなっただろう、もしかしたらルコを失わずに済んだかもしれない」というifを動機にして書かれていて、それ以上の意味を持たないように感じます。なので、「オマージュ」作品として成立するにはあと一歩足りない、という印象。

23 世界の終わりは (採点:8)
良かったところ:「感覚の異常」や「心が読める」は使い古されたテーマではあるけれど、球形/変形というビジュアルは分かりやすくてインパクトがありました(「人間が丸くなった」とか、言葉遊びは好きです)。
悪かったところ:後半のほとんどが駆け足の解説台詞で埋まっているのを見ると、設定をここまで簡素にしてもまだ複雑すぎるのかもしれないなー、と。

25 バスが来なかったおかげで (採点:8)
良かったところ:タクシーの中の気まずい空気の描写が本当に気まずくて、上手いなー、と。
悪かったところ:彼女がなぜ急いでいたのか、男はなぜそれを知っていたのか、書くなら書く、書かないなら書かないではっきりしてほしかったかも……思わせぶりな書き方に、少しだけ強引な印象が残りました。

26 ピーナッツロジック (採点:9)
良かったところ:真っ直ぐで、どこか不完全な登場人物たち。マリの容姿はショートというくらいであまり描写がないけれど、それでもキャラクターが際立っていました。雨が好きな男性の気持ちは分からないのに、雨が好きな男を悪くないと思う女性の心理は腑に落ちる不思議。語り方や省き方も含めて、すごく洗練された物語だと思いました。読んでいて、ちょっと嬉しくなった作品。
悪かったところ:最初の方の会話に、時系列が分かりにくい箇所が若干。

28 その交渉は無理がある (採点:5)
良かったところ:タイトルにかなりの魅力。無闇に片仮名や平仮名やアルファベットを使った題名が多かったこともあって、一覧表示の中で際立っていたと思います。
悪かったところ:作中に漂う空気が二次創作っぽすぎる印象。人物や展開が類型的とかそういうことじゃなく、語り方が二次向きという意味で。物語自体は分かりやすいのに、読んでいて「え、ここを省いちゃうの!?」と感じることがしばしばありました。

29 モノは壊れる、ヒトは死ぬ。三つ数えて目を瞑れ (採点:7)
良かったところ:老人、ペット、剥製、というテーマが渋いです。登場人物の年齢が高いと、それだけで物語が深まるような気がしますね。適度に思わせぶりな描写もあって、印象深い作品でした(特に深読みはしませんでしたが)。
悪かったところ:個人的な感覚としては「店の前の道路が危険」という伏線は不要でした。唐突に死んでしまう方が作品に合っている感じ。あと、タイトルの「物」と「人」をカタカナにしたのは逆効果だと思います(ムーンライダーズの方のタイトルは漢字だったかな……という曖昧な記憶に基づいて書いています)。

30 夏の塔よ、月になれ (採点:8)
良かったところ:何というか、素敵なビジュアルがたくさん浮かんでくる作品。映像で観たくなってしまいました。ラストシーンとか。
悪かったところ:作中のお芝居にはちょっと無理が……主人公が「帰郷に感激して騙されやすくなっていた」みたいな描写が一言あればそれで充分なくらいの、些細な違和感ですが。

31 戦場の休日 (採点:7)
良かったところ:ファンタジーならこういうのもアリかな、と。可愛いし。「――だからね!」な口調とか、そういうお約束な記号はもはやひとつの《型》だと思うので、この作品のように型がきちんと守られていると安心します。ツンデレ保守派。
悪かったところ:ジャンルに「ツンデレ」は卑怯です。思わず読んでしまいました。

32 バスが来るまで (採点:5)
良かったところ:こんな兄妹いねーよ! と思いつつも、テンポの良い会話を楽しみながら読めました。変に躊躇せずそっち方面へ突っ走った展開も好印象です。
悪かったところ:冒頭で二人の容姿その他を一気に解説してしまっているのはマイナスかな……あと、ここまで人気(ひとけ)がない状況で駅員さんやバスの運転手さんが登場してこないのはかなり不自然なので、フォローがほしい。作中の成り行きなら、普通はバスの運転手さんに相談するでしょう。

33 人生を楽しくする方法 (採点:8)
良かったところ:「は、はじめてだったのに!」って……少年、小学生のくせにノリが良すぎます。大物になりそうですね、将来。


34 美談 (採点:5)
良かったところ:超越しているのだかしていないのだか分からない語り手に、どこか妙な印象が残ります。良い意味で心のもやもやする作品でした。
悪かったところ:あれ、「美談」の意味が分からない……というか、各章ラストの決め台詞が浮いているように思えてしまう。何か読み落としているのかな……

36 停電の訪問者 (採点:9)
良かったところ:正直、幽霊モノは食傷気味ではあるのだけれど……この作品は「停電の間だけ」という設定が効いていました。すごく切なくて、爽やか。

38 茨の森 (採点:4)
良かったところ:>テトリス。

39 センチメンタル・シリウス (採点:10)
良かったところ:掌編ならではのシリウス感覚が魅力。最初はあんなに神秘的に輝いていたのに、慣れるにしたがってケータイのストラップみたいに卑近になってしまう、そんな無常感が良く出ていたと思います。これがもしシリウスでなくてアンタレスだったらちょっとエロそうですし、シリウスを選択したのは正解かな、と。
悪かったところ:付き合い始めた理由を書かずに別れの理由を書くというのはシリウスの暗喩と同じで狙っているのだと思いますが……やっぱり、タクちゃんがなぜ天体観測に誘ったのか、理由を語ってほしかったかな、と。一言で良いので。

40 J・V・ノイマンに撃たれる前に (採点:8)
良かったところ:型通りにマッドでクールな仲松が悪役っぽくて格好良いし、彼の発明した機械にそれなりにそれっぽい技術説明が付いているのも好感触でした。とはいえ、タイトルの意図はちょっと読めません。ノイマン型コンピュータの考案者としてのフォン・ノイマンなのか、ゲーム理論の創始者としての彼なのか、それともストレンジ・ラブ博士の原型としてのマッド・サイエンティストなのか……どれも微妙にしっくり来ない感じ。
悪かったところ:このストーリーをふまえたうえで「心を読めるからこそどうするのか/どうなるのか」というもうひと攻めがあればさらに面白くなったと思うので……ラストに「ブエノスアイレスより遠い」とか洒落たことを言ってる場合じゃないだろ、とツッコミを入れたくなりました。

41 らくがきを消しに (採点:10)
良かったところ:うわぁ、すごく楽しそう! もう、最初の一シーンからしてインパクトがあるし、落書きを消しに行くっていう妙なシチュエーションも完全に勝ち要素。うちわと髪の毛とか、小さな演出にも気が利いていました。
悪かったところ:このままでもキャラクターにはかなりの魅力があるのだけれど、容姿方面の描写がもう少しほしかった(冒頭の眼鏡のくだりが綺麗だったので、作者さんはそういう描写も上手い方だと見込んでいます)。あと、壊れた階段ごしにデッキブラシを三階まで投げ渡すのは難しいんじゃないかな……

43 帰郷 (採点:7)
良かったところ:ラストの寂しい空気にはインパクトがありました。この村を舞台にした掌編をもっと読んでみたくなります。
悪かったところ:ちょっと設定のわざとらしさが拭えません。あと、お祖母ちゃんの台詞:
>「陽子ちゃん、今年は遅かったねえ」
の「は」の意味が把握できなかった……読み違えているのかも。

46 決まりきった世界 (採点:9)
良かったところ:「一手で投了する棋士」の図を想像すると、実はすごく格好良いかもしれない、と思ったり。

47 ローランダ、空へ (採点:7)
良かったところ:ストレートすぎて読む前に結末が予想できてしまうタイトルではあるけれど、やっぱり素敵です。鳥にとって「空に憧れる」と名付けられる以上の残酷はないのかもしれませんが……
悪かったところ:言葉に飾りがなさすぎるのでしょうか……中盤の描写が、ひたすらラストへ話を運ぶための説明文に見えてしまって、あまり物語に入り込めませんでした。

50 ある朝 (採点:4)
良かったところ:短いので、疲れたり飽きたりせずに読めました。
悪かったところ:ホラーなのに怖くなかったのが残念。むしろ、ちょっと笑えてしまいました(作者さんとしてはやっぱり嬉しくない反応でしょうね……ごめんなさい)。

52 ロボット寄生 (採点:8)
良かったところ:古き佳きジュヴナイルSFのように見せかけて、コテコテの掛け合い漫才だったのか! という展開が楽しい。火星やらロボットやらいかにも「SF」な記号を使っておきながら、テーマは「2006年のおたくについて」です、と言っても通用するダメっぷり。ラストの一文までまったく気が利いてなくて、すごく良い。
悪かったところ:タイトルがあまり好きじゃない(とても主観)です。

55 明日天気になあれ (採点:9)
良かったところ:「お姉ちゃん」も素敵だけれど、両親が可愛い。照男の両親も、佐奈の両親も。
悪かったところ:「ティッシュを丸める」を「てるてる坊主を作る」意味の述語とは認めたくありません……いえ、何となくですけれど。なんだか、気分的に間抜けすぎる。

56 子供の夢 (採点:7)
良かったところ:妙な短編映画を観ているような気分になりました。登場人物たちの表情とか、ビジュアルで見てみたいかも。
悪かったところ:確かに「世界征服」は大それた夢には違いないけれど、ラストにその単語が来るとどうしようもなく拍子抜けしてしまう不思議。

57 受験戦争戦死者プラスワン (採点:7)
良かったところ:明るい殺人モノ(という理解で構いませんよね?)。ここまで無邪気なら素直に楽しめます。意表を突かれる展開ではないけれど、来てほしい箇所に来てほしい一文が来る感じで、すごくテンポの良いおはなしでした。
悪かったところ:体育教師のくだりを「伏線です」というのは無理があるかも。あと、太字は余計かな、と。

58 落日の挽歌 (採点:10)
良かったところ:「妖精族」などという割にいわゆるファンタジーなノリではないので、異民族か何かかなぁ、と考えながら読んでいたのですが……想像以上のスケールでした。ちょっと圧倒されてしまって、感想が書けません。

59 幼少時 (採点:9)
良かったところ:最短作品ながら、読んでいて感情を刺激された度合では五指に入ります。特に、
>こっそり謝ろうと思ったのも、やめた。
のあたりが。
悪かったところ:こうした簡素な掌編は背景を色々と空想するのが楽しいのだと信じているのですが、筋書きに含みがなさすぎて想像の余地がありませんでした。

60 失恋時限爆弾 (採点:6)
良かったところ:単なる便利アイテム的なオタクかと思いきや、タイミングまで最悪な慎太郎くんがラブリー! 浩次と美奈子の気まずい光景が目に浮かびます。

62 Why do you do it? (採点:7)
良かったところ:こんぺをお祭りみたいに楽しむのもアリだと思うし、こういう作品がひとつくらいあっても良いかなー、と。
悪かったところ:ラスト、こじつけでも何でも良いのでしっかりした結論を出してほしかった。こういうネタだからこそ、特に。

64 発狂した宇宙 (採点:10)
良かったところ:宇宙。すごい名前だけれど、この作品は完全に名前勝ち。読んでいるこちらまでパラノイアに陥りそう。ラストの一文とか、特に。とにかく印象が強かったので高得点を付けるしかありません。
悪かったところ:終盤の「私」が狂っていく描写は、もっと深く書き込めるんじゃないでしょうか……と、期待を込めて。

66 似たもの親子 (採点:7)
良かったところ:「クローン」をどう料理するのかな、とワクワクしながら読み進めて、本当に料理するネタだったのか! と素直に意表を突かれました。
悪かったところ:こういうスタイルだと、どうしても星新一と較べてしまうので冷静に評価できない……という問題はさておき、ちょっと書きすぎかも、と思える箇所があります。
>そこらへんは、我慢することにした
などはあからさまに話のテンポを乱しているし、そもそもCはわざわざイニシャルにせず「息子」とか「少年」とか適当に呼んでおけば良かったんじゃないかな、と。
>その息子、C
みたいなフレーズが何度も出てくると、ちょっとクドい気がします。いえ、大した欠点じゃないんですが。

70 雨ごい (採点:8)
良かったところ:語りの調子が素敵すぎます。前半、朗読のお兄さんの声を聞いているような気分になったり。後半では、絵本を読んでいるかのようなビジュアルを感じたり。それから、作中に散りばめられた独特の言葉遣いにインパクトがありました。
悪かったところ:好みの問題だと思うのですが、ラストは「降る」のか「降らない」のか曖昧に終わらせてほしかったなー、と。「あ」で終わっていたら加点していたかも。というか、オチを匂わせるのはもっと終盤になってからにしてほしかった。真ん中以降「尿だ尿だ尿が降るぞ」という雑念に悩まされて、後半のほとんどを素直に読めなくなってしまったので。

71 デジタルペット (採点:9)
良かったところ:素敵フレーズが一杯のおはなしでした。
>そうしたら、なんとなく、ボクもその『匂い』を味わうことができるような気がするんです。素敵な想像じゃありませんか?
素敵です。
>とてもyesです。
とても素敵です。さらに、幽霊になりたいってAIの夢も素敵だし、AIを端的に「あなたがいることによって存在できる」存在として捉えている点も素敵(アンドロイドみたいに身体を持つAIの場合はこういう捉え方ができませんからね)。
悪かったところ:冒頭とラストはこの場所(オリジナルこんぺ)ならではの演出ではあるけれど、不特定多数の読者を相手にしてしまったせいで「ボク」と「あなた」の1対1の軸がブレているのが惜しいかも。

72 しろゆめ (採点:8)
良かったところ:作中を満たす「間」がすごく心地良いおはなし。改ページや台詞前後の改行は基本的に苦手なのだけれど、この作品の場合は効果的だったと頷かざるを得ません。雰囲気勝ち。
悪かったところ:夢なら夢らしくもっと不思議なことが起こってほしかったかな……そんなことをしたら作品の方向性が変わってしまうかもしれませんが。

76 落果 (採点:9)
良かったところ:状況が分かりやすく、想像力も刺激される描写。無性に心がじんわりしました。
悪かったところ:いつ桃太郎みたいな昔話になるのかと期待してしまいました……や、「おじいさん」と「おばあさん」だったので。

78 ラックラック♪ (採点:8)
良かったところ:1しか出ないサイコロで人生を渡ってきた爺がひたすら渋い。タネが序盤で分かるように書いてあるおかげで、爺の格好良さを満喫できました。
悪かったところ:死神が萌えキャラなのは界隈では良く見かけるパターンですが、オリジナルものとしてはやっぱり多少のフォローがほしいところ。あと、いっそ舞台を完全なファンタジー世界にしてしまったらどうかと思いました。戦争関係はリアリティを求め出すとキリがないし……この作品の場合は、そもそも「死神」が存在するような世界を舞台にした方がすっきりするんじゃないかな、と。

79 home, my sweet home (採点:4)
良かったところ:端的に、格好良いです。空戦。
悪かったところ:SF的なハッタリが足りないように思います。義体化のメカニズムについて、ヒトが機体でAIがパイロットになるという立場の逆転について、空戦などという20世紀のスタイルで戦争を行なっている理由について――そのあたりの理屈がないから、冒頭のシーンで義体化の利点が見えず、続いて語られる設定自体が唐突に思えてしまい、ラストも取って付けたように感じられてしまいました。好きなテーマだけに、すごく惜しい。

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